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暗闇に一つの丸い月。
暗い暗い闇の中に、妖しく光を放っている。
ポツンと寂しそうにあるだけなのに、なぜこんなにも存在感があるのだろう。
――――…とても綺麗だ。
月がよく見える窓際に椅子を置き、そこに座って頬杖をつきながら、少女はそんなことを考えていた。
――そう言えば、月には不思議な力があるって言うよね。
そんな誰に聞いたのか、どこで覚えたのかわからないことを思い出す。
月には、人を狂わす力があると言う話を聞いたこともある。
「私のことも狂わせてくれればいいのに…。」
ポツリと小さく呟いた。
「俺がお前を狂わせてやろうか?」
ビクッと肩を跳ね上がらせ、バッと後ろを振り返る。
――――綺麗……。
瞬時に頭に浮かんだのは、この言葉だった。
銀色の髪が開け放たれている窓からの風をうけて、なびいている。
楽しそうに細められているその瞳は、鋭い眼光を放っていた。
深海のように、青い瞳。
月の光で照らされて――
―――美しい――。
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