第一章

2/7
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
>10年たっても、20年たっても、あるいは五年前でも自分が生きていれば変わらない事実がある。たとえば、俺がトマトを嫌いなこと。俺が小説を好きなこと。漫画のように都合のいい世界なんて妄想に等しく、現実ではありえないこと。人生ってのはそういうものだと思っていた。俺とアイツと宮月と、変わるのはもっと後だと思っ ていた。俺たち全員が成人して、就職して、結婚して、そんな風に社会に入るまで変わることは無いと思っていた。それまでは、ずっと三人一緒だと思っていた。昔から三人で馬鹿やってきた。教師をからかって遊んだり、学校サボっってゲーセンに行ったり、遅刻して担任に怒鳴られたり。それはそれで、面白かった。周りから見れ ば >「お前ら、そんなんで良いのか??社会から逸脱したクズにしかなれないぞ」 >なんていわれてきたが、「成るようになる」そう思って今を駆け抜けた。別にやりたい事が無かったわけじゃない。ただ3人でいることが、馬鹿みたいに騒いでいることが楽しかったのだ。 >「だからさぁ。今から学校行くなんて面倒じゃん。ぱぁ~と遊び行こうぜ」 >時計を指差しながら、真剣に蔵本が言った。すでに時刻は十一時を回っていた。もちろん、深夜ではなく朝の十一時だ >「俺には、行く気のある奴なんて居ないように思えるけどな。まぁお前はどうだかわからないけどさ。悠矢?」 >宮月が読んでいた本を閉じながら蔵本の話に乗った。 >「俺は、ほら、だって、単位がやばいし。それにそろそろ期末だし・・・」 >しどろもどろに答えたのを今でも覚えている。実際そんなあせりは無かったのだが、高3で受験を控えた当時、俺はもがいていた。 >「お前そんな気にしなくてもいいだろ?「受験なんて、なるようになる」 >なんて、中三の時から言ってたじゃないか。実際先週も言ってたし。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!