第一章

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怒っていた覚えも無い。しかし、こんな冷たい顔していたわけでもない。蔵本と俺と宮月。その中で、宮月はいつも>「しょうがないな。」という顔をして笑っていた >宮月は本当に笑っていたのだろうか?あの居心地のよかった空間で、彼は自分をさらけ出していたのだろうか?俺は急に不安になった。気が気ではなかった。 >「俺たちも忘れちまうのかな」 >俺は不意に宮月のほうを見た。宮月は、お気に入りのシガーケースからタバコを取り、火を付けていた。女性の裸体に蛇が絡み付いている悪趣味なシガーケースだった。 「何を忘れるんだ?」 >何のことか解らなかったわけではなく、言いたくなかったのだ。そんな、俺を見て宮月はあきれた顔をしていたような気がした。宮月は目線を夕日に戻しながら会話を変えた。 >「吸うか?」 >宮月は俺にタバコを差し出した。初めて吸ったわけではないが、咳き込んだ。それから周りを見渡していた。 >「教師は来ない。奴らは蔵元の実家だ。」 >宮月はそう断言した。 >「忘れちまうかもな。・・・忘れたくないけど。」 >タバコの煙を吸いながら俺は言った。 >「・・・・・・かもな。後10年もしたら、俺も忘れてそうだ」 >そういった宮月は悲しそうだった。 >「なぁ昨日どうして、一緒に帰らなかったんだ?」 >俺はおもむろに聞いた。 >「途中までは、一緒だったんだ。途中まではな・・・でもタバコ屋の角でアイツ急に左折してさ・・・女のところかな、なんて思って後は追いかけなかった。今日になったら茶化してやろう。そう思ってさ・・・」 >死ぬなんて反則だ。上手く聞き取れなかったが、そう言ったような気がした。夕日を見た宮月は泣いていた。水滴が頬を伝って、夕日色に反射している涙を見ながら、泣いている宮月を見ながら、それでも、俺は泣けなかった。居たたまれなくなって教室を出て行くことにした。鞄を取って、ドアに手を掛けてゆっくりと引く。ギィ ィィィと重い音を立ててドアが開いた。 >「おい」 >宮月に呼びかけられて、俺は振り返らずに立ち止まった >「死ぬなよ」 >「あぁ」 >「絶対に死ぬなよ!!」 >「あぁ、お前もな」 >短いやり取りだった。やはり宮月は泣いていた。 > >家について部屋にこもった。いっそのこと引きこもりにでもなろうか、そう考えたが止めておいた。蔵本ならどう考えたのだろうか。俺か宮月が死んでいたらアイツはどう考えたのだろう、アイツのことだ多分引きこもりに
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