10人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
怒っていた覚えも無い。しかし、こんな冷たい顔していたわけでもない。蔵本と俺と宮月。その中で、宮月はいつも>「しょうがないな。」という顔をして笑っていた
>宮月は本当に笑っていたのだろうか?あの居心地のよかった空間で、彼は自分をさらけ出していたのだろうか?俺は急に不安になった。気が気ではなかった。
>「俺たちも忘れちまうのかな」
>俺は不意に宮月のほうを見た。宮月は、お気に入りのシガーケースからタバコを取り、火を付けていた。女性の裸体に蛇が絡み付いている悪趣味なシガーケースだった。
「何を忘れるんだ?」
>何のことか解らなかったわけではなく、言いたくなかったのだ。そんな、俺を見て宮月はあきれた顔をしていたような気がした。宮月は目線を夕日に戻しながら会話を変えた。
>「吸うか?」
>宮月は俺にタバコを差し出した。初めて吸ったわけではないが、咳き込んだ。それから周りを見渡していた。
>「教師は来ない。奴らは蔵元の実家だ。」
>宮月はそう断言した。
>「忘れちまうかもな。・・・忘れたくないけど。」
>タバコの煙を吸いながら俺は言った。
>「・・・・・・かもな。後10年もしたら、俺も忘れてそうだ」
>そういった宮月は悲しそうだった。
>「なぁ昨日どうして、一緒に帰らなかったんだ?」
>俺はおもむろに聞いた。
>「途中までは、一緒だったんだ。途中まではな・・・でもタバコ屋の角でアイツ急に左折してさ・・・女のところかな、なんて思って後は追いかけなかった。今日になったら茶化してやろう。そう思ってさ・・・」
>死ぬなんて反則だ。上手く聞き取れなかったが、そう言ったような気がした。夕日を見た宮月は泣いていた。水滴が頬を伝って、夕日色に反射している涙を見ながら、泣いている宮月を見ながら、それでも、俺は泣けなかった。居たたまれなくなって教室を出て行くことにした。鞄を取って、ドアに手を掛けてゆっくりと引く。ギィ ィィィと重い音を立ててドアが開いた。
>「おい」
>宮月に呼びかけられて、俺は振り返らずに立ち止まった
>「死ぬなよ」
>「あぁ」
>「絶対に死ぬなよ!!」
>「あぁ、お前もな」
>短いやり取りだった。やはり宮月は泣いていた。
>
>家について部屋にこもった。いっそのこと引きこもりにでもなろうか、そう考えたが止めておいた。蔵本ならどう考えたのだろうか。俺か宮月が死んでいたらアイツはどう考えたのだろう、アイツのことだ多分引きこもりに
最初のコメントを投稿しよう!