第二章

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>悪の元凶があればいい。この世に、絶対の悪の元凶が存在すればいい。 >そうすれば、どれだけ助かったことか、きっと俺も宮月も、そいつを倒せば、蔵元が帰ってくる。そう思ってそいつを倒したに違いない。あるいは、生きているうちに、蔵本が自らの手で葬り去ったかもしれない。そんなことを考えた朝だった。日差しはまだない。額の汗を拭き、自分に言い聞かせた。 >そんなことはありえない。そんな小説や、漫画のような、ハッピーエンドなんて有り得ない。世の中はそんな都合よくない。殴られればいたいし、蹴られればもっと痛い。漫画のような平面の世界の中であることは、現実の3Dの世界では、有り得ない。現実の主人公が最後に迎えるのは、目も当てられないようなバッドエンド。そう 決まっているのだ。蔵元が死んでから二日がたった。つまり、今日はヤツの告別式だ。今日が終われば明日からは、アイツはいなくなる。いや、すでにいない。夜に眠れなかったことも重なって、心労はピークに達していると思う。何もする事もなく暇だったために学校に行く準備はすでに出来ている。時刻は5時半。家を出るまで に後2時間もある。ブブブブブブブブブ、机の上にある携帯が、鳴り出した。着信は宮月からだった。 >「おはよう。」 >モーニングコールか!?と、そのまま言う訳にも行かないので普通に挨拶することにした >「おはよう。こんな朝から何のようだ?」 >少し不機嫌だったかもしれない。 >「今日だな・・・告別式」 >「ああ、そうだな。」 >「今日、告別式が終わったら・・・俺たちだけで、告別式をしないか?」 >それは、2度目の告別式の誘いだった。俺は少し考えた。 >「いいよ。その時はあいつの好きだったジントとコーラを持っててやるか。」 >「コーラのジント割りか。アイツらしいな。」 >ジント、と言うのは蔵本が生前よく飲んでいた酒だ。 >「割合は9対1で。」 >これも蔵本の名言だ。コーラが9ジントが1、その酒はもはや酒じゃなかった。蔵本も酒じゃないと言うのがわかっていた。だからアイツは、ジントを割る、ではなくて、コーラを割る、と表現したのだろう。電話口で宮月も笑っていた。
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