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と、違うことを考える。
「なんでもない。暑苦しいから見ないで」
はたから見たら酷い言い方だが、ホントに誰にも"触られたくなかった"。
「はぁ……」
新人も酷い言い方だと顔をしながら無口になる。
先輩だしそれ以上はいくら腹が立っても言えない。
夏……、夏。
スーツのシャツが汗で背中にくっつく。
ハンカチがこれ以上ってないほど汗を吸い込んでいる。
「まだ着かないの……?」
久しぶりの外取材で土地勘が鈍った私は縋るように呟く。
「あそこっす」
さっきの先輩の無礼もなんのその。普通な対応。
できた後輩だな。私は正直にそう思った。
新人が指したのは俗に裏路地と言われる暗い路地の入り口だった。
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