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「楽しそうで、気持ちよさそうで……って変な意味じゃなくて。風を感じられるのがうらやましい」
そうかな、と美紗が聞き返すと、本当に羨ましそうに紀久美が頷いた。
「でも実際ね、風って辛いよ?」
少しため息をつきながら、しかし楽しげに美紗は語り始めた。
「いちいち風を読むの面倒だし、スタンスは定まらないし……」
彼女はそこで言葉を切った。いろいろな感情が高ぶってくる。
「でもね、アーチェリーやってるなーって思う。ただ平坦に矢を撃つだけじゃ、物足りないもの。風こそアーチェリーだなって」
そこまで言い切って、笑っている紀久美に気づいて美紗は言葉を切った。そしていつの間にか熱く語っていた自分に驚いた。
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