プロローグ

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 エイミング中に突然吹いてきた暴風で、私が先にミスをした。でも相手もミスをした。助かった、と思った。しかしそれも束の間の安堵感だった。  2本目はしっかり入れられた。当たり前だよね。一時でも安心した私が馬鹿だった。  いったい相手は誰だと思っているんだろうか。  これで後がなくなった。ここでミスをしたらもうおしまい。  プレッシャーに押しつぶされそうになった。  どんなに強い選手でも、参らない方がおかしい。  きっと相手も参っていると思う。でもしっかり10点に入れるだけの実力はある。――たとえこんな状況でも。  タイマーの数字が30に切り替わる。  ……そろそろ撃たなきゃ。  矢をつがえる。そうする手は心なしか震えていた。2度目の経験。しかし1度目とは比にならない。  セットの感触を確かめる。  そしてセットアップ――いつも通りに。  ドローイング――ゆっくりと丁寧に引き込む……つもりだった。
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