320人が本棚に入れています
本棚に追加
「今年は絶対に部員採るからね」
風早美紗(かざはや みさ)はそう宣言した。その表情はやる気に満ち溢れていて、しっかりとした意志がうかがえるようだった。
「入ってくれるかな、そう簡単に」
対照的に、隣にいる三島紀久美(みしま きくみ)は、あまり芳しくない顔をしながら、そんな美紗の姿を見つめていた。それはとても美紗を心配している図だった。
「大丈夫よ」
美紗はそう簡単に言ってのける。
「でも美紗ちゃんね、そう言ったってお金の事言ったら……」
「そんな話はしないわよ。入ってきてからおいおいとね」
「……悪徳商法だね」
紀久美が呆れたように呟く。そう、美紗がやっているアーチェリーはお金がかかるのだ。弓具一式を揃えるだけで10万はかかるのだ。
「アーチェリー用具って高いよね」
「高い」
「単価が半端ないよ」
こんな小さいのが1万円だもんね、と紀久美は言って、消しゴムほどの大きさであるクッションプランジャーを手の中で転がす。この道具は、矢の蛇行を防ぐ役割がある。アーチェリーでは不可欠な道具だ。
最初のコメントを投稿しよう!