最低会費5000円=カーボン矢1本

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「それにいろいろ備品を買うにも、会費が5000円しかないんだから仕方ないしね」  言葉尻に皮肉を込めて美紗が言った。  同好会にはどの会も一律5000円の会費が出る事になっている。しかし、アーチェリー同好会にとっては少なすぎるのだ。いろいろ備品を買うためにどれだけのお金が必要か、生徒会はわかっていないのだ。大した成績を残していないので、理解がないのは当たり前だったが。 「副会長に言わないで欲しいな。私だって苦労してるのに」  美紗の明らかな八つ当たりだとわかっているのに、紀久美はむすっとしてしまう。彼女は生徒会副会長。選挙の時はとりあえず笑顔作戦で乗り切って当選した。人気は意外に高く、今年は会長かと言う声も上がっている。  ちなみに紀久美はアーチェリー部員ではなく、ただの美紗の友達である。入学当時に知り合って意気投合。共にアーチェリー同好会に入ろうとしていたが、お金の面で断念した。 「ごめんったら」 「でも、部に昇格するには……部員5人以上だっけ」 「……うん」  美紗の所属しているアーチェリー同好会のメンバーは2年生の美紗だけだった。彼女は先輩と後輩はおろか、同輩もいない中で半年間部活を続けてきたのだ。
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