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帰宅路は同じ方向の様で、樟葉の一方的な話と街の雑音を交え聞きながら歩く。
時々、かかってきた電話と話していたかと思うと、突然話し始め、返事を疎かにすると、
「吉澤ぁ…お前聞いてんかよー?」
と言われたが、全て適当に相槌を打った。
彼の話も雑音にしか過ぎないのだ。
高校に入り、初めて帰路を共にしたのが樟葉になった。
「じゃあ~なァ~♪」
人通りが盛んな駅前、樟葉の間延びした声が吉澤を現実に引き戻させる。
「あぁ。」
声の方に顔を向けた時には、既に別の道へと歩き出しており、彼の行方を少しばかり眼で追えば、道路脇に停車していた黒い車の後部座席に乗り込み、数秒後、彼を乗せた車は車列に溶け込んでいった。
それを見届け、自分もまた生き急いで歩く人の中へと溶け込んでいくのであった。
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