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辿り着いたのは見上げると何となく気圧される、高層マンション。
まず一つ目の指紋認識システムで電子ロックが解除され、ホールへ入る事が許される。
ホールを抜けると、目前に噴水やベンチなど住人の為に設置された公共広場の様な場所を抜け、
更に幾重にも掛けられた厳重なセキュリティを解除すれば、自分の家に着く事が出来る。
夕日の日差しが差し込む、誰もいない空間。
幼少の頃から何等変わり無く、もう慣れてしまっただだっ広い部屋。
机には走り書きのメモと、
多すぎるお金。そして今晩の夕飯であろう物がポツリと置かれている。
吉澤はそれらに一切触れず、自室に向うなりスプリングベッドに身を沈めた。
その拍子に身体に当たる硬質物に一瞬顔を歪ませる。
電車の中で後ろポケットに終った携帯を取り出した。
ふと、先ほどの電話が気になり、着信履歴、発信履歴を共に調べる。
着信は0件。
発信は1件。
こちらから電話をかけたようだ。しかし、発信先の番号が表示されない。
「遂に壊れたか…。」
持っていても殆ど利用しない携帯を、教科書が並ぶ机に投げ置けば、
煌々と明かりの照らす中、眼鏡だけ外し眠りに就いた。
朝が来ると
また同じ日々が始まる。そんな事を夢現に巡らせながら。
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