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「昨日のテレビで─」
「武器の入手方は─」
「∀kiの新曲が─」
「Bクラスに─」
内容は違えど、結局は繰り返しだ。
椅子に座り壁にもたれ、教室内に視線を泳がせていたが、
その視界を突然遮られた。
目だけ上に向けると、そこには樟葉の姿があった。
「何見てんだョ、吉澤ァ?んな怖ぇー顔してさ~。」
今日はこちらが座っていた為、自分の方が目線が上だと自信に満ちた顔で吉澤を見下した。
「いや………怖い顔か。そうか。」
“すまない”無意識にぽつりと残し、教室を後にした。
背後から樟葉の所存を問う声が聞こえたが、気にせず屋上に向かった。
今日も誰もいない。
その方が好ましいのだが。
柵から校庭を見下ろすと、
桜の花弁が風に舞っていた。その風は吉澤の頬を撫でる。
暖かい午後の日差しと、心地よい春の風に心が澄んでゆく様に思えた。
この時点でも今だ怖い顔をしているだろうか。
──ガチャッ…──
背後にある寂れた鉄の扉がギィッと重く鈍い音を立ててゆっくりと開く。
その時、何故か心拍が速まった。
普通なら授業を受けている最中、ここに来るのは…
悪びれた上級生か。
同じ想いを抱く者か。
もしかしたら、春に散り逝く桜に魅せられて、
自らも散ろうとする者かもしれない。
散々馬鹿な事を考えた結果…
開け放たれた扉の向こうにいたのは
セーラー服を纏った少女。
今時珍しい程に黒い髪。切りそろえられた前髪。挙げ句耳の後ろで二つ括り。
紺色の短いスカートが風に靡き裾が捲れるも、少女は気にしない。
暫しの沈黙を打ち破ったのは向こうだ。
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