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マスターの予想は見事に的中して、次の日から夕方になると学生で溢れかえった。
その学生がみな口にするのが緋空に「つきあってください」だった。
連日機嫌が悪い瑠璃だったが、いつの日からか少しずつ客足が途絶え、前と同じくだれも来なくなった。理由はいくら通っても緋空が付き合ってくれないから。
その日の夕飯。
「しっかし緋空は全部断ったな、、、なんか理由があんのか?」
「えっと、、すごい昔に必ずお嫁さんにしてあげる。って約束した子がいて、、、顔も覚えてないんですが、、、誰かに告白されるとその子が「駄目!」って泣きそうに言うのがうかんで、、、ってどうしたんです?」
マスターと瑠璃は顔を見合わせていた。
「いや、、、、なんでもない。」
瑠璃は真っ赤になっていた。
「瑠璃?」
「、、、、なんでもない。忘れて早く誰かと付き合いなよ。」
その画面を見せて瑠璃は目をそらした。
「、、、瑠璃?」
僕が話しかけるとまた『なんでもない。』をくりかえした。
「嘘だ!」
僕は肩を掴んで無理やりこっちを向かせた。なにかしなきゃいけない気がしたんだ。冷たい言葉とは裏腹に悲しそうな顔をした瑠璃をみていたら。
「なんでもないならなんで悲しそうなの、、、、?」
僕が瑠璃の顔を見たままそう言ったときクールな瑠璃の顔に涙がつたった。
こっちを向いたまま下をむいて瑠璃は声もなく泣き出した。
「うえっ!?なんで泣っ、、、ごめん!!強く言い過ぎたかな!?ごめん瑠璃、、、、!!!」
驚いた理由は瑠璃が僕に寄りかかったから。正面を向いていた瑠璃が僕に体を預けたから、瑠璃は今僕の胸に頭を押し付ける格好になっている。
いけないとはわかってた。
けど、、、、僕は瑠璃を抱きしめて頭を撫でた。
そんな二人をマスターは静かに見守った。
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