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(幸せだった時…
幸せだった時…)
翼の真っ暗な世界に花畑が映し出された。
そして目の前で花をつんでいる女の子…。
『翼?なにぼーっとしてんの?
一緒に花冠つくろうよ?』
ゆっくりと振り向いた女の子は小さい頃の由美だった。
(そういえば幼なじみだったっけ?)
翼は心の中でつぶやいた。
『ほら!できたよ?花冠!』
小さい由美は翼に近づいて頭に花冠をのせた。
川のせせらぎが聞こえる程しずかだった。
しかし、それを邪魔するかの様に翼の頭に家の様子が思い出される。
さっきまでの空気とは違い冷たく息苦しい空気。
そして奥のふすまには…。
翼は唾をゴクリと飲み込みふすまを見つめた。
しかし翼はブンブンと頭を振り花畑を思い返した。
ニッコリと笑った由美がこっちを見ている。
『このお花畑、由美と翼の秘密の場所ね!』
そうだった…この花畑なら自分は自由になれる。
ここは家なんかと違う。
自由なんだ。
そう心の中で呟いた後、翼の視界はまた暗闇に戻った。
力はまるで入らなくなり、足は体を支えれなくなっている。
翼の耳元でバタバタと何かが倒れた音がすると、翼は意識がなくなった。
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