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開かない。
しかし由美は希望を捨てたわけではなかった。
由美は自転車置き場の奥へと向かった。
他にも窓があるかもしれない…。
すると、由美はピタリと足を止めた。
小さな窓が微かに開いている。
何故ここまで中に入りたかったのか自分でも分からないが、微かに開いている窓を力をこめて動かした。
バタンという音が響いたあと、窓は見事にパックリと開いている。
「やったぁ!」
由美は思わず声を漏らし、バンザイをしている自分を恥じた。
窓は由美の顔の前くらいに位置していて、入りやすいスペースだ。
由美はゴクリとツバを飲み、窓の中にスルスルと入っていく。
窓を通り抜けると冷たい空気が漂った。
当たり前だが、本は一冊も無くフロントと棚と箱しか無い。
由美は吸い寄せられるかのようにフロントへと向かった。
フロントにはイスが1つあるだけで、あとはない。
いや…もぅ1つだけあった。
フロントの机の上に黒い、本が1つ乗っている。
由美はゆっくりと、まるでスロー再生された様に本を手にとった。
「…魔術の本?」
気がつけば由美は題名を声に出して読んでいた。
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