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「……ねぇ…私は死んだの?」
静かな暗い場所で『女』が言葉を発する。
「…そうだよ」
眼鏡をかけた1人の男が、その疑問に女を見下ろしながら答えた。
「…そっかぁ」
女は、無表情で落ちつきながら言う。
「意外と冷静だね。もっとびっくりするのかと思ったよ」
「いいの。どうせ、そんなことだと思ったから」
「…そう」
男は、落ち着いてる女を見ながら、少し下がった黒縁の眼鏡を動かす。
「ここ暗いね」
「…そうだね。さっき"引っ越した"ばかりだから。設備がやや足りないかな」
男は、その今にも消えそうな点滅してるライトに、ふっと息を吹きかけると埃が舞った。
「…ねぇ、タバコはある?」
男は黙って、その女の口に煙草を喰わえさせた。
「……」
「ありがとう」
煙草に火をつけると同時に、点滅してる薄暗いライトが、小さな音をたてて消える。真っ暗な暗闇に、真っ白な煙と細く消えそうな橙(だいだい)。
女は咳き込みながら呟く。
「ゴッ…ホォ…あぁ、まずい」
「ん?それじゃ吸うのやめる?」
男は少し笑いながら言った。
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