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「いや吸う…ゴッ…ホォ…ゴッホォ」
女の煙草の灰は限界になり、その灰は落ちる。女は微動だにも動かない。
そのままの状態で、男は女に話かけた。
「なんで、ここにいるか思い出したかい?」
「…さぁ?」
「そっかぁ…やっぱ覚えてないか?」
女は、横目で男の煙草の橙に目を向け、男は少しパーマのかかった髪をかきながら言う。
「…気付いたら『ここ』に居たから…あなたは知ってるんでしょ?」
「…さぁ。僕は君を【直す】だけだから」
「…そうね」
女は、煙草の橙から目を逸らし、真上を見た。
「まぁ…でも追々自分で思い出すんじゃないかな?」
「生きてたらね」
「ハハ、そうだね。上手い事言うね」
「それともう一つ…」
「うん?なんだい?」
「名前がね…自分の名前が思い出せないの?」
女はボソッと弱々しく言った。
「なんだ、そんな事か」
「知ってるの?」
女は、横目で再度、男の煙草の橙に目を向けた。
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