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「…さぁどうだろう」
男はそう言い、女のくわえている煙草を灰皿に擦り付けて、自分の煙草も消した。
「…まぁ、いいわ」
「ただ…」
「ただ…なに?」
男は、真っ暗闇の中で喋る。
・・・・・・・・
「そうだなぁ…君は一度死んでる。どういう死に方にしろ、君の記憶はその時の強い衝撃できっと消えた…って、これは前に《ここ》に来た時話したね」
「…えぇ」
「君は《新しい自分》になった時どう思った?」
男は暗闇の中で女を見下ろしながら話す。
「最悪…って言葉かな。なにせ何も覚えてないし、自分が誰で何故ここにいるのか、まるでわからない…今も状況は変わらないけどね」
「君は一度死んだ。そして、君が僕のところへ運よくやってきたんだ。僕が君の時間を《無限にする》ように、僕が何かを教えなくても【君の運】が、きっと答えを見つけだすと…僕はそう思うよ…それが、君にとって"幸か不幸"かは別としてね」
そう言い終わると、男は備え付けの有機EL照明を点け、部屋を明るくし、女は「…そう」と小さく呟いていた。
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