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鈍く光るスパナ。
酷く、血の臭いがした。
「自分さ、前からハッキングとかしまくっとったやろ?せやから社長が怒っとるんよ。
不法侵入で死刑らしいで。怖い世の中やんなぁ。
ま、とりあえずバイバーイ」
白い歯が見えた。
細い目が開き、紫色の瞳がこちらを見ている。
ゴッ、と鈍い音がした。
視界が真っ赤になる。
頭から血が出る。
体が熱いのは家に火をつけられたからだろうか。
ああジニー、お前は火に弱いんだ。
早く逃げてくれ。
声が出ないけど、唇は読めるだろ。
だから、わかるだろ?
『逃げろ』
口を動かす。
ジニーは動かない。
ただこちらを見ているだけで。
ジニーを火が取り囲む。
燃えていく。
もう唇も動かなくて、瞼が重過ぎて開けていられない。
命令、拒否すんなよ…。
このポンコツ…。
俺は目を閉じた。
誰かが俺の名前を小さく呼ぶ声が聞こえた。
目覚めた時、とても体が軽く感じました。
自分の意思で手が動く。
驚愕する私のところにやってきたのは、真っ白な仮面の青年。
「おはようございます、ジニーくん。初めまして。僕はお人形屋さんと申します」
「…あ…えっ」
自由に声が出る。
何なのでしょうかこれは。
制御プログラムに邪魔をされないなんて。
そんな…有り得ません。
困惑する私に、彼はクスリと笑いました。
「制御プログラムは解除しました。君の望みの通り、君はリトくんを名前で呼べる。
彼が泣いているときに慰めることも、自堕落な生活に対して叱ることも出来る。」
「…嘘」
私は目を見開いた。
確かに、敬語を強制されない。
今なら、本来は決して出来ない、汚い言葉も吐けそうだった。
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