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「リト様…」
シーツが濡れる。
私はアンドロイドです。
だから、わかっておりました。
彼が助からなかったということに。
スパナで頭を撲られ、その上あの出血。
彼の体は治せたのだとしても、脳は確実に死んでしまっているでしょう。
けれど、リト様の体にはそんな痕跡は全くなく、手足の火傷もなく、本当にただ眠っているように見えました。
「…最善は尽くしました。けれど…。
…僕は彼をアンドロイドに出来ます。ですが、彼はアンドロイドにはなりたくないと。
どうしてだか、わかりますか?」
「…いえ」
「…君のマスターでありたいと、言ったのですよ。例えそれが死ぬことになっても」
「…」
私はリト様の手を強く握りしめる。
温かいのに、心臓の鼓動も聞こえるのに、リト様はもう…。
私は涙が止まりませんでした。
「…わかりません…わかりませんようっ…。
例えアンドロイドであっても、私にとってマスターはリト様だけなのにっ…!
やっとお話出来るようになったのに!!
ずっとお一人だったリト様に、もっともっと沢山のことをお教えしたかったのに!!
奥様や旦那様の代わりだって…兄弟の代わりだって…全部、したかったのに…!
私はっ、私はっ、壊れるまで貴方にお仕えすると決めたのですっ!!
なのに、私はどうすればよいのですか!?
答えて下さいリト様…リト様ぁっ…
ううっ…ひぐっ…うぁ、あ…あああぁあ!!」
私の体が床に崩れる。
力が出ない。
前も見えなくて、頭の中が真っ白になって、ただただ泣き続けた。
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