ロイ

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  この地球には、四つの大陸がある。 大昔は南極と太平洋にも大陸があったのだが、地球温暖化の影響でその二つは海に沈んでしまった。 四つの大陸の繋がっていた部分も沈み、人々は宙に浮かぶ島や人工島を創ったり、他の惑星に住み処を作った。 国という概念はなく、大陸は数々の州によって長と決まりが分けられていた。 自然を取り入れる州、同性婚の認められた州、芸術を推進する州。 様々な特色を持つ州から、気に入った州に住む人々。 そこには同じ考えの人間しかおらず、いさかいなど殆どありはしない。 誰もが幸せに暮らせるようにと、この仕組みを作ったのは、初代聖王オベリ・メルフィウス・リッド・ハーン一世。 彼は歴史上最後の戦争〝終焉〟を終わらせた偉大なる人物であった。 「『西暦2000年、第三次世界大戦勃発。それを引き金に世界恐慌。土地が荒れ、環境が荒れ、食糧難に陥る。 西暦2009年、歴史上最大にて最悪の戦争〝終焉〟。国々は核をあるだけ使い、自分の国をも攻撃し、人々は生きる為に隣人や家族を食い殺した。 西暦2010年、初代聖王により〝終焉〟終戦。世界の人口は一割を切っていた』」 「ベンキョー中っスか?」 ひょこっと窓から顔を出した赤茶色の髪の少年。 俺はヘッドホンを外し、溜め息をついた。 「お前、何やってんだよバッカじゃねぇの?大臣のジジィに見付かったらまたどやされっぞ」 「だいじょーぶだいじょーぶ!じっちゃんは自分の部屋で書類読んでたもん!」 よいしょ、と五階の部屋に入ってきた少年は、にっと笑った。 体の弱い俺とは違い、こいつ、弟のロイは無駄に元気だった。
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