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お人形屋さんはあたしの手を引いたままどんどん歩いていく。
精神的にも疲れていたあたしは足が震え、もう歩きたくなかった。
「…あのっ、タクシーとか使いません?あたしもう歩けそうになくて…」
「機械を使えばアージェンに嗅ぎ付けられますから。こうしましょう」
「えっ!」
いきなり抱き抱えられ、あたしは唖然とする。
あまりがっしりとしたタイプには見えないのに、あたしを軽々と抱き上げた彼。
あたしは慌てた。
「お、重いでしょ!?」
「軽いですよ、とても。ちゃんと食べてますか?」
「…あたし背高いしさ、ホントは重いんでしょ」
「まさか。僕は10トンだって軽々と持ち上げますよ。それに比べたら貴方は蒲公英の綿毛並に軽いですね」
「…そ、そう」
10トンって…冗談にも程があるでしょ。
でも、いいかも。
あたしはじっと彼を見つめる。
透き通るような白い肌。
艶やかな白い髪。
目元を覆い隠す白い仮面。
輪郭からして、顔は小さい。
きっと素顔は整っているのだろうと思った。
「…えーっと、どうしてあたしを助けてくれたんですか?」
「貴方に会いたいとおっしゃる方がいましてね。ただ彼はまだ動けなくて、会いに行けなかったんですよ。
そうしたら貴方にエシュロンが近付いていることに気付きまして。慌てて駆け付けましたが、他の方は助けられませんでしたね…」
「あれは貴方のせいじゃないわ!あたしが…」
あたしは俯く。
そうだ。
あたしはこれから、あの人達の死を背負って生きなければならない。
あたしが殺したようなものなんだから…。
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