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それ以来、父は私が可哀相だからと、オーダーメイドで造らせた、お母さんと全く同じ顔のアンドロイドを買うようになった。
何度も買うのは…私が壊してしまうから。
こんなのお母さんじゃないと、壊してしまうから。
『アイリス。外で遊びましょう』
「嫌よ。それより、本を読んでちょうだい」
『畏まりました。どれに致しましょう?』
「どれでもいいから!早く!」
『ご命令をどうぞ』
私はベッドの近くに飾られた花を花瓶ごとアンドロイドに投げ付ける。
けれどアンドロイドは硬く、花瓶は割れて水を被るだけだった。
防水だからそれも意味がない。
アンドロイドは、敬語しか使えない。
アンドロイドは、どれでもいいと突き放すと何も出来ない。
それはマスターを敬い、マスターの命令を忠実に再現するように仕組まれているからである。
だから私は、いつも苛立っていた。
こんなの、お母さんじゃないわ!!
『マスター、ご命令を』
「煩い!!それ片付けて廊下で待機してて!!」
『畏まりました』
アンドロイドは割れた花瓶を集め、部屋を出ていく。
私は枕に顔を埋めながら、泣いていた。
お母さんはもう戻って来ない。
そんなの、わかってるわ。
何よ…まるで生き返るって。
顔が同じだけで、ただのロボットじゃないの!!
「…お母さん…お母さんっ…」
それをわかっているくせにアンドロイドを起動させる私。
いつもいつも思うの。
もしかしたらこれにはお母さんの魂が宿るかもしれない。
って。
そんなこと、あるわけないのに。
だってそうでもなきゃ、耐えられなかったから…。
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