メアリ

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  私は起き上がり、服に着替える。 そして壁にある通信機のボタンを押した。 「馬車を用意して。出掛けるわ」 『畏まりました』 執事型アンドロイドが返事をする。 私が部屋を出ると、扉の横にはお母さんのアンドロイドがただじっと立っていた。 私はそれを無視して、家を出ていった。 馬車と言っても、馬もロボット。 だから全く揺れない馬車だった。 けど車よりはマシ。 目的地に一瞬で着くなんて楽しくないもの。 だから私はいつも馬車で森の中へ行くの。 「いつもの森へ行って」 『畏まりました』 執事が馬を操り、馬車をゆっくりと進ませていく。 道行く人々は皆アンドロイド。 見た目は人間と変わりないけど、首にメタルコアのマークが付いているからすぐわかる。 氷の結晶のような形をした、灰色のマークが。 …アンドロイドなんて便利だけど、誰かの変わりには…出来ない。 きっといつか、人間はいなくなる。 だって今だってほら、人間がいないもの。 私は頬杖をつきながら外を眺める。 暫くすると、森が見えてきた。 …ん? 私はよく目を凝らす。 すると、森の入口近くに、見知らぬ店があることに気付いた。 建物と建物の間の奥にある、小さな店。 OPENと書かれた札があるのだから、店なのは間違いない。 でも、看板もなく、何の店かが全くわからなかった。 今時こんなところに店創るなんて、変なの。 誰も通らないのに。 しかも木材の建物じゃない。 私はその店が気になって仕方がなかった。
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