ケイン

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  「気分はどうですか?」 「あの…ここはどこなの?」 「僕の店です。ケインの身に何かあると、必ず知らせてくれる機具を付けてありましてね。 行ってみたら瀕死の貴方がいたので、治療しました。一応医者でもあるんです」 「…じゃあ、私は生きてる…?」 「はい」 人形屋さんはにっこりと微笑む。 私は唖然とするしかなかった。 「あ、有り得ないわ!!だって私、車に轢かれたのよ!?生きてるはずがない!!」 「まあもろに当たったらまず生きてはいないでしょうね。 そこはケインに感謝ですよ」 「ケインに…?」 …どうしてケイン? 確かにあの子はあの場にいたけど…。 …。 …まさか…。 私は青ざめ、人形屋さんを見る。 人形屋さんの顔からは、笑顔が消えていた。 「…彼は持ち前の瞬発力で貴方を突き飛ばしたんですよ。 だから貴方は、膝より下を失くすだけで済んだ。 その代わりケインは…言葉の通り、まさにばらばら…いえ、粉々と言った方が相応しいのかもしれませんね」 「…えっ…」 ケイン、が? 私の、代わりに? こな、ごな? 私は息が詰まる。 体が震え、涙が勝手にぼろぼろ零れていく。 視界が歪み、何も見えなくなった。 足が失くなったこともショックなはずなのに、そんなこと、頭の片隅にも置かれていなかった。 「…嘘…」 「…残念ながら」 「…嘘よ…そんなの…嘘よぉ!!だって彼、私を護るって…あっ」 まさか…だからなの? 私を護るために、自分を犠牲にしたっていうの? そんな…そんなこと、私は望んでなかったのに!! 私が望んでたのは…望んでたのはっ…!!
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