ケイン

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  「…ああ、これは差し上げましょう。貴方に」 人形屋さんは泣き続ける私に、ケインのコアを差し出す。 私は震える手でそれを受け取り、強く握りしめた。 愛しい彼は、こんなに小さくなってしまった。 「…うっ…ぅ…ううっ…」 「ああ、あと義足の代金も結構ですので。元々捨てる予定でしたし」 「…く、ぅ…ぎ、そく…?」 人形屋さんがゆっくりと掛け布団を取る。 足を見るとそこには、本物の足がついていた。 ように見えたが、これは義足らしい。 私はぼやけた視界で必死にその足を見つめていた。 「ケインの足ですよ」 「…っ…!!」 ぶわっと、涙が滝のように溢れてくる。 人生でこんなに泣いたことが今まであっただろうか。 でも、仕方ない。 だって、ケインが言っていたことを、思い出してしまったから。 『…俺は貴方の枷になったりしない。支えになりたい』 …ホントに、支えてるじゃない…。 言葉通り、私をっ…。 私は軋む体を無理矢理起こし、動かない足に触れる。 柔らかくて暖かい、本物の足のような感覚。 私はもう、我慢出来なくなった。 「ごめ、んなさい、ケイン…!!私…素直、に、なれなかった…!!…ありが、と…ケイ、ン…!! ありが、とう!!ありがとう!!好き、よケイン!!ケインーーーッッッ!! うわぁあああああんっっっ!!!」 私はみっともなく声を上げて泣く。 ケインのコアを握りしめて。 ああどうかケインに伝わりますように。 貴方が好きですと。 助けてくれて、こんな私を愛してくれてありがとうと。 未来をありがとうと。 それから… これからもずっと支えていて下さいと。 どうかどうか 愛しい人に伝わりますように。 その後、とある大手企業の女社長は、大企業社長と結婚する。 多少高齢のため子供は一人だったが、その男の子はとても優しく動物好きだそうだ。 名前はケイン。 由来は彼女と、とある店の仮面の男しか知らないそうだ。 「毎度あり、です」 .
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