ルーク

3/20
36186人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
  兄貴はいつも友達に、 『俺の弟はやんちゃで、手のかかる可愛い奴なんだ』 って言ってたんだとよ。 …馬鹿野郎だよ、ホント。 兄貴とは毎日喧嘩してた。 何度か殴り掛かったことがある。 その度に病院に行ってたから、大袈裟な奴だと思ってた。 …ごめんな兄貴。 俺が悪化させちまったんだよな。 そのせいか、兄貴が死んだあとも、親父とお袋の態度は相変わらずだった。 お袋はいつも泣いている。 親父は家に帰ってくることが少なくなった。 仕事か浮気か…俺は両方だと思ってる。 兄貴がいない淋しさを、仕事や他の女で紛らわしてるんだ。 でも別にどうでもよかった。 兄貴が帰ってきたら、きっと怒ると思う。 帰ってくることなんてないことはわかってる。 だから墓参りして告げ口してやろうと思ってたのに、お袋が兄貴の墓の場所を教えてくれなかった。 なあ…兄貴。 …。 助けてくれよ。 このご時世、スピード違反なんてもんはなくなったが、免許証がねぇと車もバイクも動かない。 親にそんな金を出してもらえねぇ俺は、仲間等の後ろに乗っけてもらうしかなかった。 犯罪の取締も厳しい。何かするとすぐバレちまうし、とんでもない収容所にすぐ入れられちまう。 だからカツアゲとかも出来なかった。 喧嘩はするけど。 だから喧嘩屋っつう集団があちこちにあった。 皆不満とストレスに満たされてるってわけだ。 「シューイ!今日はサソリちゃんが喧嘩吹っ掛けてきてるぜ?」 「え、俺んとこはトラちゃんから果たし状きてんぞ?」 「どうするよ大将」 俺は携帯を閉じる。 そしてゆっくりと起き上がった。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!