メアリ

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  「…お、お母さ…」 「違うわ。私はメアリ」 「メアリ…」 メアリって、私のお母さんの名前じゃ…。 するとメアリの後ろから、青年が戻ってきた。 扉を閉め、私に微笑む。 「どうしたんだい?そんなに驚いた顔をして」 「あ、あの…この人、は…」 「僕のお人形さんですよ?ねぇ、メアリ」 「そうね、お人形屋さん」 メアリは青年に笑う。 私は混乱して、ただただメアリをじっと見つめていた。 …えっと…。 「お人形って…アンドロイドのこと、だったの?」 「まあ世間一般にはそう呼ばれてますね」 「で、でもメタルコアのマークが無いじゃない!」 「僕はメタルコアとは何の関わりもないですけど」 「メタルコアと関わりがない!?嘘!! だってアンドロイドをメタルコアの許可無しに造ったら、殺されるわよ!?」 「僕はこうして生きていますけど」 お人形屋さんは笑う。 有り得ない、常識的に。 メタルコアは今や世界中に広まったアンドロイドの利益を全て、自社の物にしようとしている。 だから他のところでアンドロイドを造り、ましてや売るなんてことは絶対に許さない。 なのに、何故この人は…。 …それに。 ちらりと、メアリを見る。 するとメアリと目が合い、笑顔を返してくれた。 「お人形屋さんを侮っちゃいけないってことよ、お嬢ちゃん」 メアリがアンドロイドだなんて、信じられない。 この表情、この仕種、この話し方。 まさに本物の人間。 だけど…お母さんと、同じ顔だわ。 死んだお母さんと…。
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