メアリ

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  お人形屋さんは、にやりと不適に笑った。 「値段を倍にさせてもらっても宜しいかな?」 「…っ…」 こ、この人、本当に…。 …でも…。 メアリを見つめれば、笑顔で首を傾げる。 お母さんだ。 間違いなく、私の。 まるで本当に生き返ったように!! 「わかったわ。いくらよ!お金なんてね、お父さんに言えばいくらでも…!!」 「ああ、僕が決めるんじゃないんだよ。決めるのはメアリさ」 「えっ」 アンドロイド自身が…? な、何それ。 わけわかんないっ。 だってアンドロイド自身は別にお金を貰えるわけじゃないのに! 「うちは一週間のお試し期間で、お人形さん自身が自分の価値を決めるのさ。 それを二倍にしてもメアリが欲しいと言うなら、またここに来るといい」 「そ、そう…」 「あら、私をご指名なのかしら?お嬢さん」 「そういうことらしいよ」 「嬉しいわ!二年目でやっと私お家に住めるのね!」 メアリは喜ぶ。 そのはしゃぎ様は、お父さんと付き合っていた頃のお母さんの映像と、全く一緒だった。 私は病んでいるお母さんしか知らなかったから、目の前ではしゃぐメアリに、涙が出そうになった。 …で、でも今。 「二年目って?」 「私が造られたのは二年前なの」 お母さんが死んだのも…二年前、なのに…。 やっぱりメアリはお母さんなんだ。 お母さんの魂が入ったアンドロイドなんだ! 「じゃあメアリ、私のお母さんになって!」 「私母親なんて出来るかしら」 「メアリがいいの!」 「ほらメアリ、行っておいで」 お人形屋さんがカウンターの端の扉を開ける。 メアリはそこを通って私の元へ駆け寄った。
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