メアリ

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  「お嬢さん、お名前は?」 「アイリスよ」 「そう、アイリス。宜しくね」 「ええ!」 私は差し出されたメアリの手を握る。 アンドロイドとは違う柔らかい人の手の感触に、私は酷く驚いた。 それを見たメアリがふふ、と笑う。 「驚いたでしょう?まるで人間みたいで」 「え、ええ。でもどうして?」 「特殊な素材を使っているの。私も時々、自分がアンドロイドだってことを忘れてしまうわ。 じゃあお人形屋さん、行ってきます」 「ああ。行ってらっしゃい」 メアリと一緒に外に出る。 ドアのベルがまたカランと鳴った。 メアリは店の前に止まっている私の馬車を見て、まあ!と叫んだ。 「凄い、馬車だわ!素敵ね!」 「お母さんも馬車が好きだったのよ」 「ああ、そうそうアイリス。私をお母さんとは呼ばないでね?」 「…え?」 どうして? 何で? メアリは私のお母さんなのに! 「今はお試し中だから、私はアイリスのお母さんじゃなくて、ただのお人形のメアリなの。 だからお母さんとは呼ばないでね?」 「…う、ん」 別に呼んだっていいと思うのに。 決まりなのかな。 なら仕方ないけど…。 メアリと馬車に乗り、ゆっくりと家に帰っていく。 メアリは楽しそうに外の景色を眺めていた。 「見てアイリス!アンドロイドばかりよ!」 「メアリは外に出たことないの?こんなの当たり前だよ?」 「そうなの?私外に出たことがなくて。アンドロイドだってばれたら、壊されちゃうから」 「あ…そっか…」 メタルコアの製品じゃないから…。
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