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咲姫も目の前きた空音に気付く。
「何か…用ですか?」
「あのさ、四ノ宮さんは何で勇助と『勝負』なんてしようと思ったの?」
(いきなり!?しかもド直球…)
物怖じしない空音の発言に驚く咲姫。だが驚いたのは歩も一緒だった。
「…理由がなければ勝負してはいけませんか?」
「ん~ん。そういう訳じゃないけどさ。何で勇助なのかなって気になったの。」
特に警戒している訳ではないが空音の馴れ馴れしさに若干引き気味の咲姫。
だか、空音はそんなもの気にしない。気にしていたら何にもできない。
「ね、何で?どーして勇助なの?相手なら他にも一杯いるのにさ。」
「何で…と言われましても…そうですね。強いて言うならば…」
「強いて言うならば?」
グッと息を飲む空音。遠くで見てる歩も緊張が伝わってきたのか同じく息を殺している。
間違っても『恋』や『好き』なんてワードが咲姫の口から出ないようにと祈りながら…
「天川君を選んだのは……」
「え、選んだのは…?」
「…………羨ましかった…からですかね。」
「…………………羨まし…かった?勇助…が?」
「はい。ただ…それだけです。」
ニコッと笑って「これ以上話すことはないぞ」と笑顔で伝える咲姫。
空音もこれ以上は踏み込めず軽く挨拶して咲姫と別れた。
そして再び歩の席へと戻ってくる。
「四ノ宮さんが勇助を選んだ理由ね…羨ましかったからだって。」
「聞いてた。……でも何が羨ましかったんだ?」
「う~ん…お気楽さ?単純さ?馬鹿さ加減?」
「勇助を羨ましがる所なんてあるのか?」
頭を抱えて悩む二人。小学校からの幼なじみだが学園のアイドルにしてお嬢様の咲姫が羨む長所など心当たりはない。
「あ~…勇助の長所なんてあるのか?」
「失敬な。俺にだって長所の一つや二つくらいあるわ。」
「「あ、勇助。」」
ようやく野郎共から解放された勇助が二人の会話に混ざってきた。
心なしか、野郎共から解放された勇助はちょっぴりやつれてる様にも見える。
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