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キーンコーンカーンコーン…
つまらない六時間目の数学も終わり、放課後になる高校。
勇助もようやく暇な時間から抜け出しうーんと背伸びをした後に帰る準備をはじめる。
「おい!勇助!」
「ん?」
突然、帰る準備をしていた勇助に声をかける男子生徒が一人。
ちゃらついたショートの茶髪に勇助と同じ黒のブレザー。友人…というより悪友の高嶋 歩(たかしま あゆむ)だ。
「何の用だ?帰りにゲーセン付き合えとかは却下だからな。」
「な!?なんで分かった!?…さてはエスパー?」
「なわけないだろ…」
しょうもない会話。平凡な高校生活。変わることのない勇助の日常。
これら全てが今日のとある出来事から一変することをこの時の勇助は知らなかった。
「勇助~。俺は毎回毎回思うんだけどよ~。俺の悩み聞いてくれるか~?」
「ハイハイ。どうせ「かわいい彼女ができないかな~。」だろ?」
「に、二連続で俺の思想を読むとは…さてはテレパシー?」
「そんな超能力使えたらこんな所にはいないだろうな…」
ハァ、とため息をつきながら教科書や筆入れを鞄につめていく。
勇助としても歩の悩みが分からないわけではないのだが…奴の悩みはストレートすぎて共感できないのだ。
「大体…『かわいい彼女』って言ったところでどんなのがいいんだ?お前は守備範囲バリ広なイメージがあるんだが…」
「ハッハッハ。上は60歳から下は5歳までいくらでも大丈夫…なわけないだろ!!」
「つまらない上に出来の悪いノリツッコミ…最悪だな…」
「ぐはっ!?ぜ…全否定…」
勇助の厳しい指摘(ツッコミ)に激しくダメージを受ける歩だが、この程度でやられる歩じゃない。
「ふん!何とでも言うがいいさ!俺はいつか四ノ宮さんと付き合えるぐらいの大物になってやる!!」
「大物って…お前がいくらすごくなってもアレは見向きもしないと思うが?」
「あぁ!!お前!!今、四ノ宮さんのことを「アレ」とか言ったな!?」
「言ったらなんだよ…」
「謝れ!!四ノ宮さんに泣いて謝れ!!四ノ宮さんはなぁ!!お前がどんなことをしようと勝ち目がない程にパーペキな人なんだぞ!!」
「まさか…俺だって頑張れば一つくらいは勝てるのがあるだろ…」
勇助は鼻で笑うように歩の涙の怒りを否定する。が、この何気無い勇助の一言がこの後に起こる一連の出来事の引き金だったのだ。
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