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「…兄ちゃん。『四ノ宮』ってだれ?…それにデートって何?」
「え?ええと…」
言葉に詰まる勇助。それも当然、実は明日はデートなんだ!とでも言った瞬間また『お赤飯』騒動になりかねない。
というより既に何もかも遅いかと…
「デートって…まさか…密会してた女性と…?」
ここはもう何をどう誤魔化しても誤魔化しきれないと悟り、正直に話すことを決めた勇助だった…
「ま…まぁ…」
「ま…まさか…兄ちゃんが…デート…?」
「…そんな…ところだ…」
風呂の扉越しで顔は見えないが乙女が信じられないという表情をしていることは容易に想像できる。
「おい…乙女。特に騒ぐことでもないからな?五月蝿く…」
「………お、」
「………お?」
「騒ぐな」と忠告する勇助だが…
「お母さーん!!お母さーん!!おー赤ー飯!!お赤飯炊いたげてぇー!!」
「うおっ!?」
勇助の忠告を遮るように乙女の叫び声が家中に響き渡る。
「だぁ!もう!!騒ぐことじゃねぇって言ってんだろ!!赤飯なんて炊くな!!」
「というよりもう炊けました。」
「何ィ!?早っ!!」
「私がこのメール見た時には既にお赤飯炊き始めてたから。」
「ちくしょう…」
だからといってまだ入浴してから数十分なのになぜ赤飯が炊き上がるのか…
赤飯ってそんなに簡単な料理だっけ?
「明日のデートに持っていきなさいってお母さんが言ってたよ?」
「持ってくわけないだろ!!」
「ふっふっふ…明日は楽しみだねぇ…兄ちゃん。じゃあね。」
「あ!おいこら!!」
勇助の制止を無視してさっさとリビングに戻っていく乙女。
一人風呂に残された勇助は少し悲しい気分になった…
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