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…はずだった。
「手札オープン。」
「お、オープン…」
が、いざ始めてみるとその実態は勇助のボロ負け。おしいとかそんな話じゃない。完敗なのだ。
「2と5のツーペア。」
「ぶ、ブタ…」
「ふふ…また私の勝ちね。」
既に十回くらい繰り返しているのだが一回も勝てない勇助。これはもはや運がないとかじゃなくトランプに嫌われてるとしか思えない。もしくは呪いか…
「さて…今まで全部私の勝ちだけど…まだやる?それとも降参する?」
「や、やるに決まってるだろ…」
遂には言葉にまで覇気がなくなっていく。
隣で見ている歩も勇助の運の無さに呆然としていた。
「ふふ…言い忘れてたけど負ければ負けるほど罰ゲームは厳しくなっていくからね。」
「な゙に゙っ!?」
「当然でしょ?勝者には褒美。敗者には処罰。これがルールよ。」
「ぐぐ……」
段々とこのお嬢様の性格が分かってきた勇助。お嬢様はお嬢様でも挨拶に「ごきげんよう」等と言う感じではなく、女王様タイプのお嬢様だと。
「思いっきり騙された…」
「ふふ…現実と妄想は一致しない。…知ってる?『人』に『夢』と書いて『儚い』と読むのよ?」
「言うな。妄想で生きてる人間もいるんだから…」
「そこで何で俺を見るんだよ!?」
声と共にチラッと歩を見る勇助。あらぬ疑いをかけられた歩は必死に誤解を解こうとするが逆に必死すぎてかえって怪しい。
「ま、適度な現実逃避は大切よ。」
「アイツの場合は逃避しすぎて現実がないがな。」
「あるわ!!現実くらい!!」
わざわざ倒置法を使ってまで力説する必要があるのか…歩の必死さはどんどん増していく。
「さ、手札オープンよ。」
「うぐ…」
そんな歩を横目に二人は勝負を続ける。自信満々の咲姫とは違い勇助の反応は悪い。また手札が悪いのだろう…
「7のスリーカード。」
「2のワンペア…」
また勇助の敗北。もはや呪いを通りこして神の思し召しとしか思えない。
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