少女

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  『憎しみ と 愛は  きっと同一で御坐います』   幾度と月の無い夜を過ごし 愛しいひとは還らない 泣けて来る程 貴方に似た口許が 私の隣で 声も無く ただ笑っていた 口の利けない可愛い此の仔 死にたくないと泣いていた 細く細くなっていく息が絶えてしまうまで抱いていた 泣けども泣けども残酷な月は 私を見下げて嘲笑っていた 『ねぇ、君!  おんなのこ なら 花の名が良いね!』 枯れてしまった白百合が 硝子の中で揺れていた ―ほら母さま!星が!流れたよ! かざぐるま くるクルクル(嗚呼、折れちゃった… 貴方が遺した小さないのち 死にたくないと泣いていた 目耳鼻口塞いで息が絶えるまで抱きしめた 大きくなった此の仔は貴方になって 貴方の様に私を置いていくのでしょう? だから然様なら 可愛い 憎い 愛しい仔 母を赦さなくても良い    シルベ 怨みを標に 戻っておいで (今度こそは 愛せるように)  
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