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「あたしは炎の女王なのよ……」
若い女が奇妙な発音でいった。うつろな表情、ふらついた動作。ここは都会を離れた北の地方の山小屋のなか。数名の若い連中が集まって、ひそかに幻覚薬のパーティーをやっていた。
それぞれ、お互いによく知った仲ではなかった。喫茶店で何となく集まり、あるうちに気が合って、幻覚薬があるからそれを飲んで遊ぼうということになった。それには街中だと、人目がうるさい。山奥へでもいって気兼ねなしにやろうということになった。そして、ここへきたというわけだった。
季節は冬。しかし、小屋の中はストーブで温かかった。
「俺は悪魔だ」
と若い男の一人がいっている。薬が効きはじめ、誰もが幻覚におちいっている。
「あたしは炎の女王なの……」
「そいだ、そうだ」
「炎の女王なの。燃えているの。あつい、あついわ」
「炎はあついものさ」
「あついわ、あついわ」
女は服をぬいで下着だけになり、山小屋のドアをあけた。外は雪が積もっている。しかし、幻覚で自分を炎の女王と思い込んでいる彼女は、寒さ等感じない。ドアから出て、よろけた足どりでどこかへいってしまった。
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