ごめんね…

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絵里が帰って静かになった教室には私と翔が残されていた。 しばらくの沈黙の後、翔が声を発した。 「もしかして…絵里のために…?」 「違うよ」 翔は私が絵里のために優介をフったと思ってるんだね。 でも残念。 違うんだ。 私は私自身のために優介をフッたんだから。 「嘘つくなよ」 「嘘じゃないもん」 「じゃあ何でさっき泣いたんだ…?」 「……っ」 言葉が見つからなかった。 あの涙は優介への想いの表れだったから。 でも、それを言ったら必然的に『絵里のため』になっちゃうから。 「やっぱ絵里のため…なんだな」 「…違うもん」 「…そっか」 翔は勝手に会話を打ちきった。 その不自然な打ち切り方に私は翔の顔色を伺った。 その視線に気付いてか、翔は小さく笑った。 その笑みが哀しそうに見えたのは、私の気のせいだったかもしれないけど… 「…じゃあ俺、行くわ。愛美も…頑張って…な」 「…うん。ありがと…」 翔は背中越しに手を振ると、教室を出ていった。 『元気出せ』じゃないんだね。 こんな時まで気を遣ってくれる…。 自分のことじゃないのにね…。 1人残された私は窓越しにグラウンドを見つめた。 サッカー部が練習をしている。 私は翔がその中に戻るのを見ずにその場を去った。 私がフッた次の日に絵里からの告白… 優介、変に思ったかな…? それとも偶然だって思ったかな…? 今となっては聞くこともできないけど…
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