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「ふん…せめて、苦しんで死ねぇ!」
ゴキブリ魔王がそう叫んで勇魔に襲い掛かろうと体に力を入れた瞬間…
「右手をグ~に~」
歌が聞こえた。
「左手もグ~に~」
それは、誰もが知っている遊び歌を歌う軽快な少女の声だ。
「くっ、この歌は…!」
その何処からともなく聞こえる歌が聞こえた途端ゴキブリ魔王は構えを解き焦ったように回りを煽り見た。
「まさか…“針山地獄”かっ!!」
ゴキブリ魔王がその名を叫ぶと同時に、少女の歌は親の仇の名を叫ぶように吠えた。
「滅多刺しいぃぃぃぃい!!!!」
ビキ
少女の声が吠えるのと同時にゴキブリ魔王の足元のコンクリートで舗装された道にヒビが入った。
そして……
「しまっ……!」
ザシュッ…!!
視界が、黒に支配された。
バサァ
否、勇魔の目の前に黒いコートを来た人が上から舞い降りたのだ。
「イエイ!!」
突然、上から舞い降りた謎の人は仁王立ちになりベルトでグルグル巻きになっている左腕を上げ天を大きく人差し指で指すと、それはもう楽しそうに叫んだ。
「へそ出し肩出し超セクスィー!世界が待ってたスーパーヒロイン!!」
謎の人は上げていた左腕をビシィ!と前方、今は謎の人で隠れて見えないがゴキブリ魔王が居るはずの場所を指差し、愉悦に浸った声で吠えた。
「鍼金 電波ァ!参・上!!!……って、あれ?」
かと、思うと今度は声に困惑の色を浮かべて両手で頭を抱えて、また叫んだ。
「逃げられたァ!!」
ゴキブリ魔王が襲い掛かる直前、腰を抜かし地面にヘタリ込んでいた勇魔も鍼金 電波(はりがね でんぱ)とか言うふざけた名前らしい謎の人の言葉が気になり、ヒョイと謎の人の後ろから顔を覗かせ前方を見た。
「…………っ!!」
息を呑んだ。
そこに在ったのは“針の山”だった。
ゴキブリ魔王が先程まで居た場所の地面からは無数の2メートルは有ろうかという巨大な“針”がコンクリートを突き破り、様々な角度で生え複雑に絡み合い山のようなシルエットを創っていた。
まさに、地獄絵図に出てくる『針山地獄』のようだ。![image=148466297.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/148466297.jpg?width=800&format=jpg)
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