第1話

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「ちっ…護鬼噛(ごきかぶり)の奴、相変わらず逃げ足速えな~。」 勇魔が針山を見て呆然としていると、謎の人はテンヤワンヤに跳ねた金髪頭をガシガシと掻いて分かりやすく困っていた。 『護鬼噛』って言うのは多分、ゴキブリ魔王のことだよな。 と、勇魔は考えつつ、目の前の針山に何も刺さっていない事に軽くない危機感を覚えた。 「また、殺しにくるんだろうな…」 「およい?」 そこで、ようやく後ろで腰抜かしている勇魔に気付いたのか、謎の人は後ろを振り向き勇魔と眼が合った。 「……少、年?」 「………ぉ」 女だった。 年齢は勇魔と同じぐらいだろうか? 肩まで伸びた金髪はボサボサとあらぬ方向に跳ねている。 着ている黒いコートは先刻の口上通り、ノースリーブで肩というか、よく引き締まった腕が丸々出ていて、両腕の手の甲から肘にかけて何故か黒いベルトがグルグルと巻き付けられている。 コートの下には何も着てないのか、胸の部分だけ閉じられており、これまた口上通りヘソというか、筋肉質な腹が出ている。 下は、またまた黒いズボンと黒いブーツ。 本人のキリリとした目付きも合わさってかセクシーと言うよりかは、カッコイイ印象の少女だ。 「……いや、あえて問おう!少年は少女かっ?」 勇魔が目の前の謎の人もとい、少女 鍼金 電波の声に聞き覚えを感じていると当の本人が唐突にチンプンカンな事を言ってきた。 「はっ!?いや…少年だけど?」 言うまでもないが勇魔はれっきとした男だ。 まぁ、腰を抜かしてヘタリ込んでいる今はそんな事言っても全く説得力は皆無だが。 とかなんとか、心中勝手に自虐していると、鍼金はとんでもない事を言った。 「あ、そうなの?随分と愛くるしい顔してるから少女かと…いや~スマンスマン。」 「はあぁぁぁあ!!?」 瞬間、勇魔は鬼の形相で跳び起きた。 「あ、背ちっちゃ」 「んなあぁぁぁああ!!?」 勇魔の形相が阿修羅に変換。 だがしかし、全く恐くない。 それもそのはずで、鍼金の述べた通り勇魔は全体的に人形レベルに愛くるしいのだ。 少女みたいな顔付きの童顔、140cm台の身長。 華奢な体付き。
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