飛行船のように

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  「あぁ! アキちゃん! アキちゃんはやっぱり、選ばれた子なんだわ!」 「ハルが心を開くなんてっ……まるで天使だ! アキちゃんは天使だよ!」 なら、ずいぶん最低な使者だな、あたしは。 うんざりと視線を泳がすと、薄く開いた光の中の暗闇で、ハルの目だけが見えた。 あたしはなんだかゾッとした。 ハルだけじゃなく、この家族みんなにゾッとした。 ここはあたしの期待以上に、おかしな家みたいだ。 人も、空間も、時間も。 全てが狂っているように、錯覚する。 それとも。 狂ってるのはあたし? あたしは今、現実にいるの? ここはどこ? グルグルする。気持ち悪い。 なにもかも、なにもかもが、気持ち悪い。  
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