飛行船のように

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  「きゃあっ…──!?」 腕をつかまれると、あたしはママさんとパパさんの歓喜の腕の中から、暗い闇の中へ引きずりこまれた。 「ママさっ……!」 驚いて後ろを振り返ると、その前にドアは無情に閉まった。 あたしは、ドアの向こう側で、二人が微笑んでいる気がした。 「ア……キ……?」 低い声。 それが初めて聞いた、ハルの声だった。 「ひゃあっ!」 スキンシップ、スキンシップと自分を落ち着かせ、彼の方を振り向いたあたしも、さすがに声を上げた。 ハルはさっきと同じ。 車から出た時と同じ。 サングラスに、白いマスク。 伸びに伸びた、好き勝手な髪。 何故か、クソ暑い外で着ていたコートは、冷たい室内では脱がれていた。  
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