飛行船のように

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  どうしてこの部屋は、こんなに寒いの。 どうしてこの部屋は、こんなに暗いの。 「そんなに怖がらなくていいよ。アキ……」 マスクのせいでこもっているハルの声が、あたしの背中を這いずり回る。 「ハ……ハルくん……?」 「そう」 「なんで部屋の中で、そんな恰好してるの?」 「人の目に触れるのが嫌なんだ」 「どうして、あたしを部屋に入れたの?」 「なにか、同じような匂いを感じた」 あたしはキョトンと声を失った後、大きく息を吐いた。 「ハル。やっぱり貴方、あたしと気が合うわ」 「なんで?」 「あたしも思ったからよ」 「なにを」 「あたしも、アンタは自分と似てると、なんでか思ったのよ」  
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