世界が揺らぐ

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  「じゃあー、連れてってくださいよ。“違う世界”とやらに」 「わかった」 ハルは即座に言うと、あたしの手をとった。 「…………?」 「目を閉じて」 素直に、まぶたを閉じる。 「上を向いて」 素直に上を。 「体の力を抜いて」 肩に入った力を、下に押し流していく。 「そうして想像して。真っ白な世界を。シミひとつない、どこまでも真っ白な、真っ白な世界を。周りにはなにもない。どこまでも白い景色。それを想像して」 すべて、彼の言うとおりにするあたし。 目の前が白くなってきて、頭がグラつく。 「うあッ……!」 声を漏らした時には、あたしはハルの部屋にはいなかった。  
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