トウ

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  水の底を漂うような心地よさから、突然肌を刺す寒気。 「ここはどこ?」 白いモヤがかかっていてわからない。 白い粒のような物体が、先の見えない灰色の空から落ちてきていた。 「ハル!? ハルー!?」 ふと気づいたあたしは、どこかにいるはずのハルの名を叫ぶ。 「ここにいるよ?」 右隣から、ハルの顔がひょっこりと現れて、あたしは飛び上がった。 「そこにいたの……」 どうして、気づかなかったんだろう……。 「ここでは、記憶的な認識とか、知能とか五感とかが、一時的に麻痺するんだよ。まあ大丈夫。空間を渡る時だけだから」 あたしの考えを読んだらしいハルが、なんともあっさりと答える。 そんなことを言われても……。  
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