トウ

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  「ねえ、ハル! ここはどこなの!? なんで夏なのに寒いのっ!? ハルの部屋はどこに行ったの!?」 全身を纏う空気が、明らかに夏の湿った暑さではなく、乾いたキリキリとした寒さになっているのに、あたしは体を両手で抱いた。 「ここは冬の世界」 「“冬の世界”……?」 「そう」 なんのことだかわからない。 「なんの話っ!?」 「四季っていうのには、春夏秋冬の四つがあるね?」 「う、うん……」 そんなことより……寒い。 あたしは手を、自分の息で暖めた。 「けれど、夏の間に冬が消滅するなんてことはないだろ?」  
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