トウ

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  「ここは現実の世界じゃなく、季節の二次元ワールドってことなのね?」 「そういうことだね」 なるほど。 おぼろげではあるが、少しだけ理解できた気がする。 あたしは、“冬の世界”に目を凝らした。 灰色の空が、永遠とも言えるくらいに、ずっと向こう側まで続いている。 白い厚い雲の上では、ピカリと光るなにかが見えて、多分あれは雷だと思う。 空から落ちている、この白い丸い物体は、きっと雪だろう。 「ハル……なんだか冬は寂しい世界ね」 「そうだね」 「違う世界には行けないの?」 「行けるよ。どこに行く?」 「…………」 あたしは少し悩んだ後、 「“秋の世界”」  
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