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「まるで、人の血を吸って赤くなっているみたい……」
うっとりと、でもどこか訝かしげに、あたしは紅葉を見上げた。
美しい紅葉に、頭の中が支配されるような、ボンヤリとした感覚を覚えた。
「昔ね……」
あたしは、脈絡なく話しだした。
ハルは、遥か下方で、目で頷いてくれていた。
「家族で紅葉を見に行ったことがあったの」
「うん」
「でもその日は、あいにくの雨でね」
「そりゃあ、不運だね」
「でしょ? それでね。お父さんとお母さんが、
『“アキ”がいるといつも雨が降る。“秋”に紅葉を見に来ても雨が降る。アキは我が家の疫病神だな』
って、言ったの」
「………………」
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