第一幕

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荷台にタスクを乗せた二輪車を、ラズリーが漕ぎ始めた頃。 セントリアの西門にひとりの人間がいた。 「まさかこんなところにいるとはな……」 手に数枚の羊皮紙持った人間が、門を見つめてぽつりと呟いた。 頭に"住民名簿"と書かれたその羊皮紙は、全てが横書きの人名で埋めつくされている。 「"タスク"と"ラズリー"……ようやく見つけたぞ……」 人間はその名の記された羊皮紙を撫でて、口はしを歪ませた。 「では、そろそろこれはお返しする」 呼びかけながら、門の脇に設置された入場許可所の窓口に住民名簿を差し出して、 「……と、忘れるところだったな」 人間は一度それを引っ込めた。 右手を、名簿の"タスク"と"ラズリー"の名が刻まれたその上にかざす。 すると、二つの名の文字が青く煌めきを放った。
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