序幕

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その場所には一人の人間がいました。 どこまでも延々と広がる荒野に仰向けになって眠っています。 それ以外は何も在りません。 花も木も草の一本だって生えていません。 風が、不毛な大地を静かに撫でていきます。 ふと、人間がうめき声を上げました。 幾度か咳き込んだあと、ゆっくりとそのまぶたが開かれていきます。   「空が……、青い」   人間がぽつりと呟きました。 その双眸は青く染まり、どこまでも澄んだ青空を写していました。 ただ、それだけでした。 それ以外は何も在りませんでした。
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