第一幕

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清々しい青空の下、風にざわめく草原の間を一台の二輪車が走っていく。 二輪車は一定の速さでペダルを漕ぐ、サドルに座った人間と、その後輪の荷台に乗ってリンゴにかじりついている人間の二人を乗せて軽快に車輪を回していた。 そしてその後ろから、            「そこの二人乗り二輪車、止まりなさい! 二輪車の二人乗りは禁止されているはずだ!」            もう一台の二輪車が追って走っていた。額から汗を流しながら、小太りの中年男性が必死にペダルを踏んでいる。 「自警団のおっちゃんは今日も頑張るねえ……」 先を走る二輪車の、荷台に座る人間が言った。 短い金髪に、青い双眸を持った十代中頃の少年だ。 感心した風に頷く割りに、回る車輪を止める気配はさらさらない。
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